中途半端な夏開き
ふと一番下の引き出しを開けると、風鈴があった。
何年か前の夏休み、夏らしいことをしようと思ってガラス工房の風鈴作り体験に参加したのだが、工房の中は溶解炉の熱で視界が歪むほどの暑さだった。
顔を真っ赤にしながらガラスを吹いた。
風鈴は夏らしいが、風鈴作りはちっとも夏らしくない。
よく考えれば、風鈴は夏が来たら吊るすのだから、風鈴作りは夏が来る前に済ませておくべきだ。
冬眠から目覚めた風鈴は、今年もベランダに吊るされた。
しかしうるさい。
こんなにうるさいもんだったかな。
窓を閉めてこの音量、余程の猛暑でない限り窓を開けているお隣さんには耐えられないだろう。
風鈴は5分も経たぬうちに部屋へと連れ戻され、カーテンレールの下で静かになった。
ごめんよ、せめてエアコンの風が当たる場所にと思ったけど吊るす場所がなかったんだ。